ワンウェイクラッチとは?
ワンウェイクラッチとは、一方向にだけ回転できる機構部品です。一方向にしか回転しないので、逆回転の防止や動力の遮断・伝達に使われます。身近な例としては自転車があります。ペダルを漕ぐと後輪に力が伝わって進みますが、ペダルを止めたり逆回しをしたりしても、後輪はすぐに停止せずしばらく進み続けます。これは、ワンウェイクラッチが後輪に搭載されている為、逆方向に回転させる力を遮断するからです。また、複写機の紙送りローラーにも使われています。ローラーが一方向にしか回らないことで、用紙が逆戻りするのを防ぎます。このように、ワンウェイクラッチは自転車や複写機など、私たちの生活の中で幅広く使われている大切な部品です。
本記事では、ワンウェイクラッチとはどのような部品なのか、主な3種類のワンウェイクラッチの特徴やメリット、用途についてご説明いたします。
ローラータイプワンウェイクラッチとは?
構造と仕組み
ローラータイプワンウェイクラッチは、外輪の内径面または内輪の外径面に精密なカム形状が施されています。そのカム面と接触する円筒ころ(ローラー)によって、一方向に回転するときは、楔にころとスプリングが挟まり、トルク伝達を行います。逆方向に回転すると、ころとスプリングが噛み合わなくなり、空転するという仕組みです。TOKのワンウェイクラッチは、このローラータイプに該当します。
また、クラッチエレメント単体のワンウェイクラッチは、シェル型と呼ばれる、絞り加工のアルミ材のハウジングを使用しています。一方、TOKのワンウェイクラッチはギア、カム、プーリーなどの形状のハウジングに勘合して使用する一体型タイプのワンウェイクラッチが主流です。一部の製品(TCJ・TCKシリーズ)に関しては、クラッチエレメント単体でのご使用が可能です。詳しくはこちらからご覧いただけます。
メリット
ころとスプリングのシンプルな構造で小型化しやすく、限られたスペースにも組み込み可能です。そして、コンパクトにもかかわらず高トルク設計が可能で、そのシンプルな構造によって製造工程が簡素化され、大量生産に向き、比較的低コストで製造できるのが特長です。さらに、高回転での使用が可能です。補足ですが、TOKのローラータイプワンウェイクラッチは、潤滑油が含侵された焼結部品を使用している為、自己給油の状態で使用可能な製品です。
用途
ベイトリール、複写機、金銭機器、ペーパータオルディスペンサー等
スプラグタイプワンウェイクラッチとは?
構造と仕組み
スプラグタイプワンウェイクラッチは、外輪と内輪の間に「スプラグ」と呼ばれる特殊な形状のカム(楔形の部品)を多数配置したワンウェイクラッチで、それにより、力が分散され、高トルクを発揮します。一方向に回転するとスプラグが噛み合ってトルクを伝達し、逆方向に回転するとスプラグの噛み合いが外れて空転するという仕組みです。また、スプラグタイプワンウェイクラッチはカムクラッチとも呼ばれています。
メリット
多数のスプラグを円周上に配置することで、トルクが一点に集中せず、広い範囲に分散して伝達されるため、高いトルクを実現できます。さらに、スプリングによってスプラグが常に内外輪に軽く接触しているため、噛み合うまでの遅れが少なく、素早い応答が可能です。また、スプラグが噛み合うまでの角度(バックラッシュ)を非常に小さくできるため、高精度な位置決めが必要な用途にも適しています。参考までに、ラチェット機構では爪と歯を噛み合わせてロックする仕組みのため、動作にはある程度の角度が必要になります。
用途
自転車の後輪、自動車の減速機の切り替え等
ラチェットタイプワンウェイクラッチとは?
構造と仕組み
ラチェットタイプワンウェイクラッチは、ラチェット機構を応用した構造で、爪と相手部材(ラチェット歯)が噛み合うことで一方向の回転を伝達します。一方向に回転すると、爪が歯から離れるので、歯が爪と接触せずにスムーズに回転し、逆方向に回転すると、爪が歯に引っかかり、内外輪をロックして逆回転を防止するというシンプルな構造です。ワンウェイクラッチとラチェットの違いは、ワンウェイクラッチは動力伝達の方向を制御する機械要素の総称を表しますが、ラチェットはこのワンウェイクラッチ機能を実現する機構を表しています。
メリット
無潤滑で使用可能な為、メンテナンスが簡単です。そして、空転時は爪が歯から離れるため、摩擦抵抗が小さいのが特長です。さらに、シンプルな構造の為、設計の自由度が高く、非常に大きなトルクを伝達する用途にも対応できます。
用途
ソケットレンチ、ラチェットスパナ、自転車のペダル、時計やオルゴール等の自動巻き機構等
ワンウェイクラッチとは?まとめ
ワンウェイクラッチは、一方向のみに回転し、逆回転を防止することで、さまざまな機械や装置の動作を支える重要な機構部品です。
・ローラータイプワンウェイクラッチ:高回転・高寿命・メンテナンスフリー(TOK製品の場合)
・スプラグタイプワンウェイクラッチ:高トルク・高精度の位置決め
・ラチェットタイプワンウェイクラッチ:低摩擦・メンテナンスフリー
今回は、主な3種類のワンウェイクラッチを紹介しましたが、それぞれのメリットに合わせて製品をご選択下さい。
TOKが取り扱うローラータイプワンウェイクラッチは、こちらからご確認いただけます。