樹脂ベアリングの用途をご紹介
樹脂ベアリングは身の回りの様々な製品で使用されています。キャビネットやデスクなどの事務用品から、OA機器、金銭機器、さらには薬品を取り扱う設備まで、その用途は多岐にわたります。なぜ樹脂ベアリングはこれほど多くの分野で使用されているのでしょうか?金属製のベアリングの方が精度は高く、使いやすいのではないかと思いますよね。その理由は、樹脂ベアリングの持つ特徴が、金属ベアリングに比べて多くのメリットをもたらすからです。
今回の記事では、なぜ樹脂ベアリングを使用するのか、そしてその樹脂の特性を活かした用途をご紹介いたします。
樹脂ベアリングを使用する理由
金属ベアリングではなく樹脂ベアリングを使用する理由は主に3つあります。
理由1:自己潤滑性
自己潤滑性とは、潤滑油を給油することなく摺動性を保つことで、樹脂は、その自己潤滑性があるために金属のような焼付き防止のための給油が不要で、周囲を油で汚す心配がありません。
理由2:静音性
金属の転がり音は甲高く耳障りな音を出す傾向にありますが、樹脂の転がり音は樹脂の粘弾性により低く、比較的静かで柔らかい印象になります。
理由3:軽量
樹脂ベアリングで一般的に使用されているポリアセタール樹脂の密度は1.42[g/cm3]で、鋼材の密度7.84[g/cm3]の約20%ですので、樹脂部品を使うことによって製品全体の軽量化に貢献します。
樹脂ベアリングの用途
先述の樹脂ベアリングを使用する理由を踏まえ、樹脂ベアリングの用途をご紹介します。
用途1:冷蔵庫や机、チェストの引き出し
冷蔵庫の野菜庫や冷凍庫の引き出しに樹脂ベアリングが搭載されており、引き出しの奥と、本体の手前にある樹脂ベアリングがレールを走行するようになっています。冷蔵庫の引き出しには軽量な食材から重量のある食材まで様々なものを収納しますが、チーズやバター等の軽めの食材には樹脂ベアリングは必要なく、野菜程度の重さには樹脂ベアリングが適しており、冷凍食品等の重い食材にはインサート成形した樹脂ベアリングが適しています。収納する食材によってどの種類のベアリングを搭載するか検討する必要があります。
机やチェストの引き出しの構造も基本的に冷蔵庫の引き出しと同じで、レールとベアリングを使っており、上段の引き出しよりも、比較的重くなる引き出しの中段、下段に樹脂ベアリングが使われます。
用途2:キャビネット
樹脂ベアリングが搭載されているキャビネットは目いっぱい引き出すことが出来ますが、その理由は、サスペンション機構を使用しており、引き出し側のレールと本体側のレールの間にもうひとつレールを組み込んでいるからです。以前は書類を保管するファイリングキャビネットが多く使われていましたので、引き出しの奥にも書類をしまいやすくするためには、全域引き出せることは大きなメリットでした。また、古くは金属製ベアリングが多用されていましたが、キャビネットには過剰品質であってことと、転がり音が目立つことがあったので、樹脂ベアリングが上市されてからは、最適品質で静音効果のある樹脂ベアリングが主流になりました。最近では、リニアガイドレールを使った引き出しも良く見ますが、リニアガイドレールは少しでも破損するとボールがバラバラになってしまい、全体を組み替えるのは非常に困難です。樹脂ベアリングであれば、破損したとしても樹脂ベアリングを交換するだけで修理が完了します。
用途3:スライドドア
かつてのスライドドアは床面にレールがあるものが多かったのですが、ユニバーサルデザインを重視した昨今では、床面にレールを設置することなく、上部に吊戸車を搭載して快適性を高めています。吊戸車が走行するレールは、コの字型やU溝形状の走行面になっていて樹脂ベアリングが抜け落ちないようになっており、樹脂ベアリングは、走行面の形状に倣うような形状にします。例えば、コの字型で走行面が平面のレールを持ったスライドドアには外輪形状がフラットな樹脂ベアリングが適していますし、U溝形状であれば、樹脂ベアリングの外径はR形状のものが適しています。樹脂部品は、金型さえ作ってしまえばいろいろな形状を成形出来ますので、レール形状にフィットした樹脂ベアリングはいかようにでも作ることが出来ます。
一方、古くからある床面に甲丸レールを設置するような引き戸にも樹脂ベアリングを使うことが出来、有名なものでは物置の引き出しがあります。甲丸レールには、レールに沿った形のU溝形の樹脂ベアリングが適しています。こちらからTOKの樹脂ベアリングの形状についてご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
用途4:高速スキャナ(OCR)
TOKの一般的な樹脂ベアリングであるDRシリーズベアリングは、樹脂の絶縁特性により静電気を帯電することがありますが、ERシリーズベアリングは導電仕様の為、静電気が帯電することはありません。これは、アウターレースやリテーナ、グリースといった樹脂ベアリングの材料に、導電性材料を含有しているからです。高速で紙を搬送すると摩擦で静電気が発生し、その静電気が空気中に舞い上がる紙粉を樹脂ベアリングが吸着し、回転不良などにより紙送りに支障をきたす恐れがあります。この問題を解決するために、電気を通すことのできるERシリーズベアリングを使用し、吸着の原因となる静電気を走行レール側に導通させて帯電を抑える役割を果たします。
用途5:順送式入浴装置
順送式入浴装置は、介護が必要な方が入浴される時に使用する装置のことです。要介護者は担架に寝たままで入浴が可能で、搬送用ストレッチャーで運ばれたところから、担架を浴槽の上にスライドさせ、浴槽を上昇させることで入浴出来ます。この装置の中では、担架をスライドする部分に耐水性の樹脂ベアリングが使われております。水気や湿気の多い環境でも錆びにくい耐水性の樹脂ベアリングは、アウターレースとリテーナーに樹脂を、インナーレースとボールに錆びにくいステンレスを採用しています。従来の樹脂ベアリングはグリースを注入しておりますが、今回は湯船につかる為、グリースは使用しておりません。
樹脂ベアリングの用途をご紹介 まとめ
この記事では、樹脂ベアリングの3つの特徴と、用途例を5つご紹介しました。自己潤滑性、静音性、軽量性といった金属ベアリングにはない優れた特性が特徴の樹脂ベアリングは、冷蔵庫や机の引き出し、キャビネット、スライドドア、高速スキャナ、順送式入浴装置などに最適です。それ以外の用途では、樹脂の材質を変更することによって、耐薬品性や耐熱性を持たせることも出来ます。より詳しい情報はカタログ掲載されておりますが、ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。